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2025.08.28 NEW
リフィル

「リーガルパッドメモ」に宿る機能美と創造を作る力

今回は「リーガルパッドメモ」のお話。このリフィルを端的に説明すると「縦1本の罫線を加えた、青い用紙を使った横罫メモ」。たったこれだけ。でも、このフォーマットの背景にはおよそ140年のメモパッドの歴史と進化が深く息づいている。さらに「ノックス」デザインの哲学でもある「調和する機能美」が加わり、唯一無二の高機能なリフィルとして、自分には欠かせない道具となっている。
上は、ある筆記具ブランドのトップの方2名を前にインタビューをした取材の記録。現場では紙面に目を落とす余裕もなく、耳に入った言葉を走り書きしている。左の余白には、発言者や時間(これは録音を後から聞き直す時にとても便利)、重要なキーワードと思えるところには※などの記号を同時進行で書き込んでいる。このリフィルを使うと、ランダムな走り書きでも縦罫が視線と記述を導き、無造作なメモも自然に美しく整うのだ。
魅惑の余白を生む赤い縦罫
リーガルパッドの発祥は19世紀末のアメリカ。1888年、裁判に携わる専門家からマサチューセッツ州の紙製品メーカーに特注メモの依頼が来る。それは横罫のメモパッドに1本の縦罫を加えるというものだった。裁判や法律が関わる公文書の作成には、後から論点を整理したり、注釈を加えたりする作業が必須となる。これには紙面を左右に分割する縦罫がとても役立つのだ。完成したメモパッドは、裁判官や弁護士など法律関係者に広まり、やがてlegal pad(=法律用箋)として定着する。

リフィルの「リーガルパッドメモ」は、日常の仕事や普段の暮らしの中でも大活躍する。縦1本の罫線は「マージン罫」と呼ばれる。marginには、余白、欄外、余裕といった意味がある。横書きでは、書き始めの位置となる左端が特に重要で、マージン罫はこの左端に絶妙な余白を作る。無造作に書き込んだメモも、この余白にひと言を追加するだけで、見返した時の視認性が格段に高まる。
整う・見やすい・書きやすい絶妙な余白
マージンの幅は、バイブルサイズでは約2cm。記号や数字に加えてキーワードなども書き込める絶妙な広さだ。マージン罫の利点は、まず文字の左端が自然に揃い、見た目が整うこと。箇条書きの内容も視認性が高まり、見返すときに探しやすくなる。さらに、記入時の補足、後からの記入や分類もスムーズにでき、あらかじめ目に入れておきたい情報を強調するのにも便利だ。

伝統的なリーガルパッドの紙色は黄色が定番だ。この黄色にまつわる説はいくつかあるが、私がもっとも有力だと思っているのは、裁判記録のメモを手書きで残しておき、後に秘書が白い紙にタイプする時に手書きと印刷文書を色で区別しやすくするため、という説だ。
リフィルの「リーガルパッドメモ」の紙色は薄い青。こちらもシステム手帳に綴じたときに目立つため、目的のリフィルを素早く見つけやすい。そして、青い紙面と筆記具のインクが生み出すコントラストも独特で楽しい。自分の好みはブルーブラック。さらに鉛筆の筆致や濃淡もこの用紙では上品に映える。
たった1本で無限に広がる自由自在な使い方
マージン罫の使い方に、決まりやルールなどは一切ない。仕事でも日常でも、その活用法はアイデア次第で無限に広がっていく。
マージン罫は、To Doリストに最適のフォーマットだ。チェック印だけでなく、優先度を示す記号(例えばA、B、C…など)も書き添えられる。記入方法はとても簡単。やるべき仕事や買い物などの項目を思いつくままランダムに書き出していく。後からマージンに優先順位を追記したり、立ち寄るべきお店をメモするだけで作業の効率が大きく高まる。
シンプルなノートとして使い、後から見出しや区切りを加えるだけで、情報の整理や検索がぐんとしやすくなる。例えば、その日の出来事を記録する日記として使うのもおすすめだ。書きたいこと、残しておきたいことだけを気軽に書き留め、日付を添えるだけでいい。書く内容も分量も自由なので、日記帳にありがちな三日坊主のプレッシャーに縛られることなく、自分のペースで続けられる。
マージン罫は、記録を整理する場面でも力を発揮する。例えば読書中に気になったフレーズとページ数をあわせて書き留めれば、見返しやすい読書メモになる。連番を入れるだけで、行ってみたい温泉のリストや1日の行動予定表として活用できるし、1枚を使って材料と手順を書き分ければ、簡潔なレシピシートにもなる。会議では要点をメモし、後から発言者の名前を追記するだけで、実用的な議事録として仕上げることができる。
問いと答えを書き込む学習法にも、マージン罫はとても効果的だ。マージンに「Q」「A」と記し、問いと答えをそれぞれ書き込んでおく。こうしておくだけで、繰り返し見返すことができ、自然と記憶の定着につながる。答えの部分を紙片などで隠せば、自分でクイズ形式にして確認することもでき、受験勉強や暗記の復習にも幅広く応用できる。
システム手帳の自由さを活かすメモリフィル
情報の収集や整理はデジタルツールでも十分にこなせる。しかし、デジタルはあらゆる情報を画一的に処理し、文字も画像もすべて0と1の論理に還元してしまう。そのため、空間的な手応えや身体的な実感が乏しくなり、記憶や発想との深いつながりを築くのが難しくなる。ここが紙というアナログな道具との大きな違いだ。
本革のシステム手帳はクラシカルで重厚な佇まいだけど、リフィル(ページ)の差し替えは1枚単位で自由にできるので、使い勝手は驚くほど軽快で柔軟だ。思いついたことをすぐに書き留めることができ、不要となったページは取り外していくだけで本当に必要な情報が自然に手元に残っていくのも大きな魅力だ。情報が蓄積したら、ページを並べて全体を俯瞰し、マージンに追記していくことで思考が整理されていく。手を動かし、情報を動かし、思考を深める。この柔軟性こそが、マージン罫を持つ「リーガルパッドメモ」の真価であり、1本のマージン罫が「魔法の罫線」と呼ばれる理由なのだ。
文・写真/清水茂樹(編集者・文具ディレクター)

1965年生まれ。
2004年に日本で唯一の文房具の定期誌「趣味の文具箱」を創刊。2016年からはシステム手帳の魅力と最新情報を発信する雑誌「システム手帳スタイル」を発刊。2009年から2022年まで日本文具大賞(ISOT)審査委員。
現在は主にシステム手帳の商品企画と、魅力の発信に取り組んでいる。
本コラムで紹介した製品
リフィル リーガルパッドメモ 80枚
バイブルサイズ
521-762
440円(税込)
・ラインアップ
・ONLINE SHOP(楽天)