
システム手帳は私たちにとって欠かせない道具。手帳を開いて、見て、書き込む。それは身体に染み込んだ所作であり、風のような自然な営みだ。無意識に繰り返されるその動きは、生のリズムそのものでもある。「エヌ/ピアス」は登場以来、多くのユーザーから高い評価を受け、知名度を高めてきた。「わたしのエヌピは、これ」なんて、手帳愛好家の間で3文字の愛称で親しまれるほど、日常に寄り添う存在になっている。今回、自分が使ってみたエヌピは、限定色の「ブルー×ナチュラル」だ。
発売当初から「グリーン×ナチュラル」を愛用しているが、見慣れた「エヌ/ピアス」がまとった斬新で濃厚な青は、独特の非日常感を纏っている。いつものシステム手帳とは少し異なる、わずかな重力のような緊張感を生み、それが記憶を引き寄せ、書きたい欲を高める。静かにそこに佇む青なのだけど、道具としての手帳に宿る日常性を揺さぶる力を持っている。
発売当初から「グリーン×ナチュラル」を愛用しているが、見慣れた「エヌ/ピアス」がまとった斬新で濃厚な青は、独特の非日常感を纏っている。いつものシステム手帳とは少し異なる、わずかな重力のような緊張感を生み、それが記憶を引き寄せ、書きたい欲を高める。静かにそこに佇む青なのだけど、道具としての手帳に宿る日常性を揺さぶる力を持っている。
使い込むほど深まる青の魅力
「エヌ/ピアス」の使い始めは全体にホワイトワックスが浮かんでいる。空と雲の境界のような繊細な青が印象的だ。植物タンニン鞣しならではの柔らかな色合いと上質な質感が品格を漂わせる。そして使い込んでいくほどにワックスが馴染み、革の艶と色の深みが増していく。これは「ブルー×ナチュラル」ですでに体感済みだ。

この青も早く「自分の青」に育てたい。そう思い、約1ヶ月かけてしっかり使い込み、風合いの変化に楽しく向き合ってみた。最小サイズのミニは、お尻のポケットに常駐させ、常に上から圧力がかかる状態に。時間を見つけてはクリームを塗り、ブラッシングを丹念に繰り返した。その結果が上写真。青の深みが増し、シボの高まりでは艶が増し、ところどころにコバルトブルーの輝きも現れ始めた。
このような本革の変化こそが、システム手帳が与えてくれる大きな歓びだ。使い込むほどに手の跡や傷も増えていく。それらすべてが自分だけの痕跡となり、世界にひとつだけの表情を刻んでいく。この青は、静けさと奥行きを感じさせ、心をそっと遠くへ導く。多くのシステム手帳好きが求める「日常を特別に変える力」が、この青には確かにある。
このような本革の変化こそが、システム手帳が与えてくれる大きな歓びだ。使い込むほどに手の跡や傷も増えていく。それらすべてが自分だけの痕跡となり、世界にひとつだけの表情を刻んでいく。この青は、静けさと奥行きを感じさせ、心をそっと遠くへ導く。多くのシステム手帳好きが求める「日常を特別に変える力」が、この青には確かにある。
細部にも宿る柔らかな美
「エヌ/ピアス」の魅力は、ホワイトワックスレザーとナチュラルタンレザーの2種類の革が響き合う絶妙なコントラストにもある。ナチュラルタンレザーは使い込むことで濃く飴色へと変化し、コントラストの表情も時とともに移ろう。この経年変化が「エヌ/ピアス」に一層の深みと奥行きを与えている。

絶妙なコントラストは、中面のポケットやペンホルダーなどでしっかり体感できる。

「エヌ/ピアス」を毎日手にして感じるのは、全体に漂う優しいふっくら感だ。特にカバーの角や背、中面のポケットは丸みを帯びており、クラシカルで洗練された佇まいを生み出している。カバーはオーソドックスなへり返しで仕上げているが、へり返しを重ねることで独特のふっくら感と柔らかな存在感を生み出している。見た目でも伝わるこの感触は、実際に手にして初めて、その心地よさが実感できる。

バイブルとミニの2モデルはベルト式だ。どちらもリング径は20mmと大きく、リフィルをたっぷりと綴じることができる。

綴じる量に応じて全体の厚みが増減するが、この変化にしなやかに対応する設計がこのベルトの構造に組み込まれている。ベルト中央に向かってゆるやかにふくらむ「肉盛り」は、見た目の美しさだけでなく、差し込みやすく抜けにくい実用性と、厚みの変化にも柔軟に対応する機能を備えている。細部に宿るこの作りも長い歴史をもつ「KNOX」ならではの技。ちなみにベルト部は開閉時に頻繁に指をかけることが多く、1ヶ月で濃紺の艶が最も上がった部分でもある。
ペンホルダーが放つ静かな機能美
ペンホルダーは、「エヌ/ピアス」ならではのコントラストを強く印象づけ、視線を引きつけるポイントとなっている。ベルト式のバイブルとミニは、カバーと一体化した外向きペンホルダー。ペンをすっぽりと覆い、確実に保護してくれる。ベルトなしのナローとミニ5のペンホルダーはカバーに配置してあり、ペンの着脱がより軽快にできる。

濃紺の革艶にシルバーに耀くペンを組み合わせると、クラシカルな印象が際立つ。そこにナチュラルタンレザーの温かみが加わることで、落ち着きと華やかさを合わせ持つ絶妙なコントラストが生まれた。

ナローのリング径は11mm。バイブル並みの筆記面積を確保しつつ、ナローならではの携帯しやすい薄型仕様になっている。

「エヌ/ピアス」の深く静かな青が手に馴染むたびに、日々の記録は少しずつ特別な時間へと変わっていった。ふっくらとした仕立てや、革が育つ愉しみ、そして色の重なりが心に余白をもたらし、気づけば自分だけの物語が刻まれている。「ブルー×ナチュラル」は、単なる道具を超えて、感性に寄り添う相棒になっていた。
文・写真/清水茂樹(編集者・文具ディレクター)
1965年生まれ。
2004年に日本で唯一の文房具の定期誌「趣味の文具箱」を創刊。2016年からはシステム手帳の魅力と最新情報を発信する雑誌「システム手帳スタイル」を発刊。2009年から2022年まで日本文具大賞(ISOT)審査委員。
現在は主にシステム手帳の商品企画と、魅力の発信に取り組んでいる。
1965年生まれ。
2004年に日本で唯一の文房具の定期誌「趣味の文具箱」を創刊。2016年からはシステム手帳の魅力と最新情報を発信する雑誌「システム手帳スタイル」を発刊。2009年から2022年まで日本文具大賞(ISOT)審査委員。
現在は主にシステム手帳の商品企画と、魅力の発信に取り組んでいる。
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