FEATURE

『DP PAPER』ものがたり(前編)
たった一枚の紙、わたしたちは
これを“道具”と呼ぶ

いわれも知らぬあまねく先人たちの知恵とノウハウから培われてきた技術の結晶

デジタルと仮想空間にまみれつつある世の中にあっても生き残る一枚のプロダクト。
薄く、はかないたった一枚の紙もひとたび重なり、積み上げられれば、わたしたちの眼前にその存在感をしっかりと示す。

それはもはや私たち人間と切っても切れぬ道具であり、これからも残り続ける——
システム手帳 日付リフィル
システム手帳 定番リフィル

洋紙という道具に、魅了された現代人

太古の昔、ナイル川のほとりで作られていた紙の原点パピルスは、その利便性が故、瞬く間にエジプト文化を席捲した。
長きに渡る紙の歴史において、入手困難なパピルスの代わりに羊皮のような皮さえも素材となる時代もあった。
そして時は過ぎ、現在の製紙技術の根底ともなる紙のつくり方は意外にも!?アジアが原点となる。大陸で継承されたとっておきの漉きの技はいつしかシルクロードを渡って各方面へ伝播するのである。
長らく和紙という独自の文化を紡いできた日本でも、近代にはいよいよ今私たちの目の前にある洋紙にとってかわった。
もちろん和紙には和紙の良さがあるわけだが、普段使いで、なによりも気楽にサッと書けるこの洋紙という道具に、私たち現代人はすっかり魅了されることになる。
その背景には、筆がペンというモダンな道具に変遷を遂げていったことも見逃せない。
そして、人類は、その紙とペンに絶妙にマッチングする「リング付きの手帳」という新たな道具さえ生み出してしまったのだった。そう、KNOXの代名詞「システム手帳」である。
システム手帳はページが完全製本されたノート仕様とは真逆の、ある意味リフィルの製本自体を使う人に委ねた自由編集可能なノートというわけだ。それが故に、その自由さを一度味わうとこれがなかなか逃れられない魔力!?を持つ。そして、案の定というべきか、本革製のシステム手帳が素材もさることながら機能的にも進化する中で、ふとその中身はいったいどうなのか?と問い続ける日々がやってくることになる。

「この重いシステム手帳と硬いリングに相応しい紙とはなんぞや?」と——

私たちの答え『DP PAPER』

紙の長きにわたる歴史には負けるが、たっぷりと月日をかけ、私たちなりに答えを出し、ようやく形となったのが我らが『DP PAPER』。

前述の通り、システム手帳は革製で、しかも金属のリングが付いている。すでにこの時点で重厚感も重量感もいっぱいなわけだが、一転、毎日手にする手帳に挟む紙は限界まで薄くかさばらず軽くしたい!という想いが『DP PAPER』開発のスタートだった。手帳は書くための道具であり、しかも携帯する道具なのである。
一方で、それに相反する紙の耐久度、つまり、大小さまざまある硬いリングに挟んでも極限まで破れにくくする!という二律背反の開発条件にきちんと立ち向かわなければ、書く人にとってはただただ悲しい結末になってしまうわけだからそこは慎重に開発を進めなければならない。
さらには、ペンとの相性も忘れずに。万年筆のニブや数あるペンの先端にとって心地よい滑りの表面づくり、そしてインクの裏抜けやにじみにもできる限り気を配ったマルチペーパーをも目指すことになる。
実に製造現場泣かせの欲張りな発想から形にするまで数年の時を経て、ようやくブランドあげての自慢の一枚に仕上がった。
後編では、『DP PAPER』開発から数年を経た今、あらためてその生まれ故郷に足を踏み入れる。