FEATURE

1/fのゆらぎのように、静かに、心地よく
傍らに寄り添う自分だけの一冊

さまざまな「1/f」ゆらぎが一冊の中に封じ込められた「FLUCT」を可能にする素材と技の数々

浜辺に打ち寄せる波、小川のせせらぎ、草原を渡る風、煌めく木漏れ日、鳥のさえずり・・・自然界に存在する心地よい波長には「1/f(エフぶんのいち)」という心地よい“ゆらぎ”があると言われます。
ほぼ一定のリズムを持っていながらも完全に正確ではないこの波長は、ふっと止んでみたり、強く吹いてみたりと、どうやらこのわずかな不規則性が人間の体内と同化し、わたしたち人間は予想を適度に裏切られ、しかもそれを心地よく感じるようです。
定規を使った真っすぐな線さえもわずかなズレや歪みがあり、ゆらいだ木目を生かした家具やハンドメイドの生地、手すきの和紙や手で轆轤を回した茶碗などと同様に、自然由来の本革やハンドメイドの革製品にも「1/f」ゆらぎが潜んでいるはずです。
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「FLUCT(フラクト)」に使われているこだわりの個性派レザーたち

【ALASKA(アラスカ)】ワックスナチュラルシュリンク

イタリア植物タンニンなめし協会の発起社の1つであるLa perla Azzurra(ラ・ペルラ・アッズーラ)社の革です。La Perla Azzurra社は1967年創業の老舗タンナーで、主にフランス原皮を使用しアルゼンチン産ケブラチョのタンニンで鞣しています。アラスカは染料染めしたダブルショルダーを軽くバフがけし、ロウ吹きした後に専用ドラムでロウを浸透させながらシュリンク加工を施した革です。染料染めの自然な見栄えにシュリンク、ワックスの質感がプラスされ独特の風合いとなっています。
※生産ロットによって色や風合いが異なります。個性あるアラスカレザーならではの特徴としてご理解ください。

【BUTTERO(ブッテーロ)】

製造元のタンナーはイタリアのトスカーナ地方にあるConceria Walpier(コンツェリア・ワルピエ社)。ブッテーロはステアという成牛のショルダー部分の硬い部分を使用しています。一頭の牛から肩の部分はそれほど取れず貴重な革です。ブッテーロはハリとコシがありイタリア独自の染色技術で着色され、経年とともに非常に美しく深い色合いに変化していきます。シボがなくスムースな革として上級ランクに位置する本格派植物タンニン鞣しレザーです。

完全ハンドメイドによる裁断

こだわりの革専用包丁を使って、1パーツずつ“ゆらぎ”を表現した自然でなだらかなラインに裁断していく。

革漉きの下ごしらえが製品の美しさを決定づける

パーツになった革の四方を限りなく薄く漉く工程は外せない。本革だから可能なこの漉き工程は、製品が仕上がった際のエッジの美しさに左右する。

美しい「ゆらぎ」を表現する念引き

目に入りやすい革の表側だけに念を引く革職人が多い中で、村上氏はわざわざ手間をかけてパーツ表裏のエッジに念を引く。こうすることでより引き締まった、日本刀のような美しいゆらぎラインを表現することが出来ると言う。

コバ磨き

コバ磨きには職人の個性が出る。もちろん技の良し悪しも。念引きやコバ磨きこそ職人にとってはあたり前の技術として語られて久しいが、村上氏の手にかかった断面の美しさは間違いなく筆舌に尽くしがたい。
磨き終わったコバは色濃く、輝きを増している。
表裏に念を引いて、コバを磨き上げたパーツはそれ以前のものと差が歴然。

これぞアルチザン。こだわりの足踏みミシン

匠の技を持つ職人でさえ電動ミシンがごく普通になった現在にあって、いまだ電気要らずの足踏みミシンにこだわる村上氏。それは手縫いのような精巧さと温かみを同時に再現する極み。研ぎ澄まされたセンスと熟練を併せ持つ職人“アルチザン”の直感的な足踏みから繰り出されるアナログミシン裁き。そこから導かれる立体縫製にはたしかに心地良い“ゆらぎ”が存在した。
足踏みで袖ミシンを巧みに操り、一枚の革を美しい立体に仕上げていく。
「FLUCT」のデザインアイコンでもある2重剣先ベルトにもこの袖ミシンが活躍。

電動でも足踏みでもない正真正銘のハンドメイド

FLUCTのデザインアイコンとなる剣先ベルトへの想いはひとしお。2枚を重ねた厚い革同士を最後につなぎ留めるのは“手縫い”の技。ミシンでは決して再現することのできない、デザインの要を主張するただ一箇所に魂を込めて針を通す。